イスラム圏の国々は、イスラム教の戒律によって、経済や投資の面でも規制があります。
利息の禁止、豚肉・酒類・たばこ・武器などへの出融資の禁止などの特徴があり、
他の資本主義の国々のように、自由にはいかないところも多く、
それが経済発展の足かせになっていたところもあるようです。
しかし、こうした規制を守りつつ、うまく資金の調達や投資を行うシステムが、
30年ほど前から登場・整備されながら、その規模を拡大してきました。
近年は、石油価格の高止まりによる中東諸国の資産の蓄積、所得水準の向上と投資家層の拡大を背景に、イスラム金融は急成長を続け、その資産規模は7000億ドル、01-06年の5年間の成長率は15%とも25%とも言われています。
そして、急激に拡大を続けるイスラム金融の資金調達の手段として
代表的なものが、スクーク(イスラム債)です。
増大するスクーク(イスラム債)発行額
イスラム債は、資金調達の手段として用いられますが、その調達資金は、イスラム教の教義で禁止されている豚肉や酒類などと関わりのない事業に投資されることが大前提となっています。(イスラム教では投機も禁じられているため、賭博関係の事業へも投資できません。)
そして、調達資金による投資で得られた収益を、その額に応じて投資家たちに分配します。
イスラム金融では利子が禁じられていますが、実態経済へ投資を行い、その運用益を得ることは認められています。つまり、投資先の企業が事業を行った結果、生み出された収益を分配することはOKということで、一般用語で言うところの”配当”は許されるようです。
イスラム金融は、中東やマレーシアがその育成に力を入れていることや、中東の大型プロジェクトの資金調達に利用されるケースも多いことから、その規模は急激に拡大中です。(現地スポンサーは、社会的イメージ向上のためにも、イスラム金融による資金調達を希望することが多いらしい。)
イスラムの戒律にのっとった金融システムが整備され発展してきたことは、オイルマネーの受け皿としての意味だけでなく、中東地域の経済発展を促す意味でも、大きく貢献しているのだと思います。(おそらく、このシステムがなければ、潤沢なオイルマネーがあっても、それを中東地域の発展のために、効率的に使うことができなかったことでしょう。)
イスラム金融が、イスラム諸国の経済発展のために有効に機能し始めたことは、イスラム経済にとって、大きな転換点となっているのではないかと思います。
今後、世界の総人口の1/4を占めると言われるイスラム教徒の生活水準の向上とともに、イスラム金融市場は、さらに拡大するとも言われており、世界経済を語るうえで無視することのできない存在となっています。
MEDUSA ~オイルマネーの受け皿&良好なファンダメンタルで注目を集める地域
MEDUSAという言葉。
最近、マネー雑誌でも取り上げられるようになりましたので、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
BRICs経済研究所の門倉貴史氏が提唱した用語で、マレーシア・エジプト・ドバイ・サウジアラビアの4カ国を指します。(ちなみに、門倉氏はVISTAの提唱者でもある。)
門倉氏によれば、この4カ国の市場に共通しているのは、”イスラム金融”が発達しており、
湾岸産油国の富、いわゆるオイルマネーの受け皿になっている点。
この4カ国の中では、マレーシアだけが東南アジアに位置しており、なんだか異質な感じですが、
マレーシアはイスラム教徒の多い国でもあり、世界で最もイスラム金融の発展した国。2007年に発行されたスクーク(イスラム債)376億ドルのうち260億ドルが、マレーシア市場で発行されています。
そのほかの3カ国も、アフリカ最大のイスラム金融国家エジプト、世界最大の原油生産国サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の中でも最も金融・インフラが発達して、経済成長を続けているドバイというわけで、イスラム金融やオイルマネーを語るうえで外せない国々ばかりです。
また、この4カ国は、原油高により好景気ばかりでなく、ファンダメンタルズが安定して良好である点、米国経済との独立性が高い点も魅力的。
このようにMEDUSAに代表されるイスラム金融の国々は、新しい一大経済圏を形成しようとしています。BRICsやVISTAなどの新興国とは、ちょっと違うストーリーを持った成長性を感じさせてくれる点でも面白い投資対象ですね。
参考URL&参考書籍:
・
日経マネー 2008年 04月号
・
ドバイ株投資完全マニュアル
・ 拡大するイスラム金融 -石井啓一議員のHP
・ 急成長するイスラム債市場 -ロイター
・ イスラム金融の概要(PDF) -国際協力銀行
▽イスラム世界の経済について知ろう!